子曰はく、述(の)べて作(つく)らず、信(しん)じて古(いにしへ)を好(この)む。窃(ひそ)かに我(わ)が老彭(ろうほう)に比(ひ)す。
(訳)わしは古人の已(すで)に言っていることを受け伝えてこれを述べるばかりで、まだ古人の言わないことを自ら作り出すことはしない。古人の作ったことにあらゆる理が備わっているから、わしは深くこれを信じて疑わず、篤(あつ)くこれを好んで厭(いと)わないのである。昔、殷(いん)の代(よ)に老彭(ろうほう)という賢人(けんじん)があって、古人の言ったことを伝えてこれを述べ深く信じ篤(あつ)く好んだが、わしは窃(ひそ)かに自らこの老彭(ろうほう)に比してこのようにしているのである。
著者の解説では、「作」は聖人でなければできないけれども、「述」は聖人の次の賢人でもできることである。孔子が詩書(ししょ)を刪(けず)り礼楽(れいがく)を定め、周易(しゅうえき)を明らかにし、春秋(しゅんじゅう)を修めたのはみな先王(せんおう)がしたことを受け伝えたので、自ら創作(そうさく)したのではないから、このように言われたのである。と書かれていました。
孔子が諸聖人の教えをまとめて折衷(せっちゅう)し、大成(たいせい)した思想を記した『論語』が、あらゆる事に説得力を持つ理由が分かりました。


