ピアノの鍵盤を眺めていると、ふと疑問に思うことがあります。

「なぜピアノは88鍵なのだろう?」

白鍵と黒鍵を合わせて88鍵。

現在の一般的なピアノでは当たり前の数字ですが、実はピアノが誕生したときから88鍵だったわけではありません。

では、なぜ現在のピアノは88鍵になったのでしょうか。

今回は、ピアノの鍵盤が88鍵になった理由を、ピアノの歴史と音域の広がりから見ていきましょう。

ピアノは最初から88鍵ではなかった

現在のピアノの原型は、18世紀初頭にイタリアの楽器製作者、バルトロメオ・クリストフォリによって作られました。

当時のピアノは、現在のピアノよりも鍵盤の数が少なく、音域も狭いものでした。

初期のピアノでは、およそ4オクターブ程度の音域しか持たないものもありました。

つまり、

「ピアノ=88鍵」というのは、ピアノが誕生したときから決まっていたものではない

のです。

作曲家がより高い音、より低い音を求めるようになるにつれて、ピアノの音域も少しずつ広がっていきました。

作曲家の要求によって鍵盤が増えていった

ピアノが発展した18世紀から19世紀にかけて、音楽そのものも大きく変化していきました。

モーツァルトの時代のピアノと、ベートーヴェンの時代のピアノでは、鍵盤の数や音域に違いがあります。

さらに19世紀になると、オーケストラの規模が大きくなり、音楽表現もよりダイナミックになっていきます。

作曲家たちは、

「もっと低い音が欲しい」

「もっと高い音まで使いたい」

と考えるようになりました。

そのため、ピアノメーカーは鍵盤を増やし、低音域と高音域を徐々に広げていったのです。

では、なぜ88鍵で止まったのか?

ここが一番興味深いところです。

「88」という数字には、数学的に特別な意味があるわけではありません。

88鍵という数になった大きな理由は、

人間が演奏する音楽に必要な音域と、楽器としての大きさ・構造とのバランスが取れているから

と考えることができます。

現在の88鍵ピアノは、低い「ラ」から高い「ド」まで、7オクターブと少しの音域を持っています。

音名で表すと、

A0(ラ)からC8(ド)

までです。

この広い音域によって、ピアノは低音から高音まで非常に幅広い音楽を演奏できます。

88鍵のピアノは7オクターブ以上

88鍵という数を、オクターブで考えてみましょう。

1オクターブは、同じ音名が繰り返されるまでの12個の半音で構成されています。

ピアノの88鍵は、

7オクターブ+長2度

の音域を持っています。

最低音はA0。

そこから音を上がっていくと、中央の「ド」であるC4を通り、最高音C8に到達します。

つまり、ピアノは非常に低い音から、人間の耳に聞こえるかなり高い音まで、一台でカバーしているのです。

鍵盤を増やせば、もっと便利なのでは?

ここで、

「それなら100鍵、120鍵にすれば、もっとたくさんの曲を演奏できるのでは?」

と思うかもしれません。

実際、88鍵より多くの鍵盤を持つ特殊なピアノも存在します。

しかし、鍵盤を増やせば、それだけ良いというわけではありません。

鍵盤を増やすということは、

  • 楽器が大きくなる
  • 弦の本数が増える
  • 張力を支える構造が必要になる
  • 響板も大きくなる
  • 重量が増える
  • 製造コストも上がる

など、さまざまな問題が出てきます。

そして何より、一般的なクラシック音楽のピアノ作品では、88鍵の音域で十分に演奏できる曲がほとんどです。

そのため、現在では88鍵がピアノの標準として定着しています。

88鍵は「ちょうどいい」数字だった

ピアノは、長い歴史の中で少しずつ鍵盤を増やしてきました。

そして最終的に、

「これ以上増やしても一般的な音楽ではそれほど必要ない」

というところに落ち着いたのが、現在の88鍵なのです。

つまり、88という数字そのものに特別な秘密があるというより、

音楽表現の幅と、楽器としての大きさ・構造とのバランスによって生まれた数字

と考えると分かりやすいでしょう。

まとめ

ピアノが88鍵になった理由を簡単にまとめると、

  1. 初期のピアノは88鍵ではなかった
  2. 作曲家がより広い音域を求めるようになった
  3. ピアノは低音・高音の両方向へ音域を広げていった
  4. 19世紀に現在の88鍵に近い形が定着した
  5. 88鍵が音楽表現と楽器の大きさのバランスに適していた

ということになります。

普段何気なく弾いている88個の鍵盤。

その一つ一つには、300年以上にわたるピアノの歴史が詰まっています。

ピアノを弾くときに、

「この88鍵は、最初から88個だったわけではない」

と思って鍵盤を眺めてみると、いつものピアノが少し違って見えてくるかもしれません。